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建設業法令遵守ガイドライン(第4版)/1.見積もり条件の提示

1.見積条件の提示(建設業法第20条第3項)

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【建設業法上違反となるおそれがある行為事例】
①元請負人が不明確な工事内容の提示等、曖昧な見積条件により下請負人に見積りを行わせた場合
②元請負人が下請負人から工事内容等の見積条件に関する質問を受けた際、元請負人が、未回答あるいは曖昧な回答をした場合
【建設業法上違反となる行為事例】
③元請負人が予定価格が 700 万円の下請契約を締結する際、見積期間を3日として下請負人に見積りを行わせた場合

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上記①及び②のケースは、いずれも建設業法第20条第3項に違反するおそれがあり、③のケースは同項に違反する。

建設業法第20条第3項では、元請負人は、下請契約を締結する以前に、下記(1)に示す具体的内容を下請負人に提示し、その後、下請負人が当該下請工事の見積りをするために必要な一定の期間を設けることが義務付けられている。これは、下請契約が適正に締結されるためには、元請負人が下請負人に対し、あらかじめ、契約の内容となるべき重要な事項を提示し、適正な見積期間を設け、見積落し等の問題が生じないよう検討する期間を確保し請負代金の額の計算その他請負契約の締結に関する判断を行わせることが必要であることを踏まえたものである。

(1)見積条件の提示に当たっては下請契約の具体的内容を提示することが必要

 建設業法第20条第3項により、元請負人が下請負人に対して具体的内容を提示しなければならない事項は、同法第19条により請負契約書に記載することが義務付けられている事項(工事内容、工事着手及び工事完成の時期、前金払又は出来形部分に対する支払の時期及び方法等(4ページ「2-1 当初契約」参照))のうち、請負代金の額を除くすべての事項となる。
 見積りを適正に行うという建設業法第20条第3項の趣旨に照らすと、例えば、上記のうち「工事内容」に関し、元請負人が最低限明示すべき事項としては、

① 工事名称
② 施工場所
③ 設計図書(数量等を含む)
④ 下請工事の責任施工範囲-3-
⑤ 下請工事の工程及び下請工事を含む工事の全体工程
⑥ 見積条件及び他工種との関係部位、特殊部分に関する事項
⑦ 施工環境、施工制約に関する事項
⑧ 材料費、労働災害防止対策、産業廃棄物処理等に係る元請下請間の費用負担区分に関する事項

が挙げられ、元請負人は、具体的内容が確定していない事項についてはその旨を明確に示さなければならない。
施工条件が確定していないなどの正当な理由がないにもかかわらず、元請負人が、下請負人に対して、契約までの間に上記事項等に関し具体的な内容を提示しない場合には、建設業法第20条第3項に違反する。

(2)望ましくは、下請契約の内容は書面で提示すること、更に作業内容を明確にすること

元請負人が見積りを依頼する際は、下請負人に対し工事の具体的な内容について、口頭ではなく、書面によりその内容を示すことが望ましく、更に、元請負人は、「施工条件・範囲リスト」(建設生産システム合理化推進協議会作成)に提示されているように、材料、機器、図面・書類、運搬、足場、養生、片付、安全などの作業内容を明確にしておくことが望ましい。

(3)予定価格の額に応じて一定の見積期間を設けることが必要

建設業法第20条第3項により、元請負人は以下のとおり下請負人が見積りを行うために必要な一定の期間(建設業法施行令(昭和31年政令第273号)第6条)を設けなければならない。

ア 工事1件の予定価格が 500 万円に満たない工事については、1日以上
イ 工事1件の予定価格が 500 万円以上 5,000 万円に満たない工事については、10日以上
ウ 工事1件の予定価格が 5,000 万円以上の工事については、15日以上

上記期間は、下請負人に対する契約内容の提示から当該契約の締結までの間に設けなければならない期間である。そのため、例えば、6月1日に契約内容の提示をした場合には、アに該当する場合は6月3日、イに該当する場合は6月12日、ウに該当する場合は6月17日以降に契約の締結をしなければならない。ただし、やむを得ない事情があるときは、イ及びウの期間は、5日以内に限り短縮することができる。
なお、上記の見積期間は、下請負人が見積りを行うための最短期間であり、元請負人は下請負人に対し十分な見積期間を設けることが望ましい。